「やばい、妊娠してる」
彼女のこの言葉から、僕をとりまく環境の全てが変わった。
僕は、学生結婚を決意した。
大学生である僕にとって、この決断は到底簡単なものではなく、相当の覚悟が必要だった。
これから僕が書くことは、実際に僕が経験したこと。すべて実話である。
僕の身の回りに起こったこと、そしていかにして「産む」という決断をしたか。
その過程でぶち当たった困難を書いていきたい。
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目次
彼女の妊娠が発覚するまで
普段と何かが違う不安
突然のことだった。彼女が切り出した。
「なかなか生理がこないの」
僕の彼女は毎回規則正しくくる人間だ。なので2-3日来ないだけでも異常事態である。
そんな彼女が1週間も生理がこないというのだから、僕は動揺した。
今思うと愚かであるが、この段階では「まさかな…」と思う程度だった。
勇気をふりしぼる
1週間も生理がこないとさすがに、僕らの間にも不安が溢れてくる。
お互い直接口にはしないけども、なんとなくわかっているような独特の雰囲気が流れていた。
不安になるのは、先が不透明だからだ。
妊娠しているのか、していないのか。もしかしたら病気かもしれない。
不安を払拭するため、勇気を出して言ってみた。
「明日になってもこなかったら、妊娠検査薬つかってみようか」
怖くてなかなか使えない
結局次の日になっても状況は変わらず。妊娠検査薬を使うことにした。
忘れもしない。2017年8月18日。
その日の夜は二人揃って、家でご飯を食べた。
食事をすまし、なんとなく写っているテレビを見ていた時。
「次トイレ行く時に検査薬使ってみるね」
彼女がそう切り出した。
僕はなんだかおちつくことができなかった。見ているテレビの内容が全く入ってこない。
1時間ほど経過しただろうか。
彼女が立ち上がり、無言でトイレへ向かった。
帰ってきた彼女に向けてぼそっと一言。心臓がキュッと締め付けられる。
「検査薬つかってみた?」
彼女は即座に返答した。
「ううん、使ってない。怖いの。」
一瞬にして緊張がほぐれた。
そりゃそうだ。検査薬を使うことがどれだけ勇気のいる行動か。
簡単にできるようなことではない。
怖くてなにもできなかったのだろう。
僕は静かにこう言うしかなかった。
「そうか」
覚悟を決める
結局、その日の夜はテレビを見ている彼女を残して僕は寝てしまった。
僕がいるせいで、検査薬が使いにくかもしれないとも思った。
一人にさせてあげる方が楽かもしれない。
(今思えばこの考えは間違いだったと思う。そばにいてあげるべき。)
ふと目がさめた。
眠い目をこすりながら手元の携帯をみると、深夜1時だった。
彼女は薄暗い部屋の中で、まだテレビを見ていた。
「あ、起きちゃった?」
「うん。気が付いたら寝ちゃってたよ。」
ふと彼女の方に視線をやると、机の上には未開封の妊娠検査薬があった。
まだ検査はしていないみたいだ。
その視線を察した彼女が言った。
「あれから3回くらいトイレ行ったけど、まだ検査してないや」
僕はビクッとした。
この数時間、どれだけ精神的に負担だったろうかと思った。
毎回トイレに行くたび恐怖に負け、「次は検査しよう」と決心することを繰り返していたのであろう。
とても辛いことであることが容易に推測できる。
僕はただ、小さく縦に頷くことしかできなかった。
ぼんやりとピンク色の箱をながめていると、突然彼女が言った。
「検査してくるね」
目線の先にあった妊娠検査薬を手に取り、トイレに向かった。
覚悟を決めたように見えた。
ぼくはその後ろ姿をみながら、じっと目をつむった。
結果は陽性

彼女が静かに帰ってきた。彼女が次の口を開くまでの間が、数十分にも感じた。
「やばい、妊娠してる」
その言葉を聞いた瞬間、僕の心に「とてつもなく大きくて、重いなにか」がのしかかった。
お腹がキュッと締め付けられる。
今の気持ちを表す日本語が見つからない。脳が追いつかず、口を開くことができない。
心臓の鼓動が、早くなっているのがわかる。
人生はこんなにも急展開するものなのか。
昨日までの常識が、今の僕には通じない。
旅行の計画も、買おうと思っていた服も、そういったごく普通の日常的なことが何もかもが一旦リセットされる。
天地がひっくり返ったような状況になっていることは、本能で理解できた。
気が付いた時には、彼女は泣いていた。
僕は、大粒の涙を流している彼女をただ抱きしめることしかできなかった。
かける言葉が見つからない。声を発することができない。
そんな自分が本気で悔しかった。
後日わかったことなのだが、あの涙は「悲しさ」「嬉しさ」「不安」「安堵」のいずれかでもなかったと言っていた。
わけがわからないけど、自然と涙が出てきたという。
きっと、限界まで引き出されたいろんな感情が混ざり合っていたのか。
人間が表現できるリミットを超えた時に起こる、反射的な反応だったのかなと思う。真相はわからない。
「産む」という決意をするまで
冷静に判断ができなかった
妊娠しているという事実を消すことはできない。
僕らがすぐにぶち当たった困難は、この小さな命をどうするかということだった。
僕は正直、自分の頭で考えて判断できるような状態ではなかった。
目の前でつい数分前に突きつけられた衝撃を飲み込めてさえいなかったのだから。
頭が真っ白のまま、とっさに僕は聞いた。
「(彼女の名前)はどうしたい?」
無責任に最初の判断を彼女に丸投げしたのである。
彼女が答えた。
「産みたい」
即答だった。
「堕ろすことは絶対にできない」と付け加える。
「どうすればいいのかわからない」僕とは対照的に、彼女の意思は明確だった。
その時僕はハッとした。
彼女の意思が、僕を強くさせた
いま、この状況下で一番不安なのはどちらだろうか。
まだ学生で、経済的に自立していない僕の方か?卒業したらいっぱいやりたいことがある僕の方か?
いや、違う。
今こうやって考えている最中にもお腹の中で命を育てている彼女の方だ。
自分の何倍も不安で不安でたまらないだろう。これから、どうすればいいのかさえわからないだろう。
そんな彼女が本能で「産みたい」と断言している姿に、僕は奮い立たされた。
僕が不安になっていたら駄目だ。全力で彼女を支えないと。絶対に3人で幸せになってやる。
僕は覚悟を決め、静かに言った。
「産もう。結婚しよう。」
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当時の状況と今後について
当時僕は大学4年生。21歳。
あと半年で卒業で、4月からはITの会社に勤務することが内定している状況。
彼女は僕と同い年の21歳でフリーターだ。
妊娠がわかってからは、体を考えてお休み中。
現在はお互い実家暮らし。この半年でお金を貯めないといけない。
僕のバイト代は月に10万円程度。
想像を絶するほど大変であることに間違いないが、僕は腹をくくった。
定期的に会いに行くため、彼女の実家に行く日々が続いているが、今後のことを考えたら、正直その交通費もきびしいくらいだ。
でも妊娠中は不安なこともたくさんあるだろう。精神的にも不安定になりやすい。
つわりで体調が苦しい時にそばにいてあげられないのはだめだ。
そのための必要出費と考えている。
僕と彼女、双方の両親への報告は済んでいる。
応援してくれていることが、なによりもの救いだった。
あったことを事細かく全て書くと、この記事が膨大になってしまう。本一冊かけるのではないか。
なので今後は、今回書けなかったことなどを引き続き発信して行く予定だ。
この記事を書いた理由
正直、今回のことを公開しようか悩んだ。
あまりにも個人的なことだし、内容がセンシティブすぎる。
でも、自分なりに考え、「公開する」という決断をした。
この経験が、だれかのためになるといいな
妊娠が発覚し、「産む」と決断するまで、僕らは孤独だった。
あらゆる選択を僕ら二人ですることを強いられた。
両親への報告を含め、人生に関わる大きな決断をいくつも、21歳の僕らだけでやった。
周りにだれも相談できる人がいない。相談はおろか、このことを喋ることさえもできない。
その時間の負担はとてつもなく大きかった。
もしかしたら、同じような境遇で悩んでいる人がいるかもしれない。
その人たちの心の支えになりたい。
大丈夫。僕らでも前向きに頑張れているんだから君たちもできるはず。
どんな選択であれ、胸を張って決断してほしい。
一人でも多くの人の意見を聞きたい
いくら僕らが幸せであろうとも、近い将来の結婚を考えていたのだとしても、いわゆる「でき婚」「おめでた婚」であることには変わりはない。
でも今回のことに関して、僕はまったくもって悲観していない。自らの決断に絶対的な誇りを持っている。
来年に生まれる子供が楽しみで仕方ない。
この記事を奇跡的に読んでくれたあなたは、僕らの「孤独」から解き放ってくれた人だ。
僕らの決断について、あなたの意見が聞きたい。
もちろん、「計画性ない」とか「無責任だ」とか「子育てはそんな甘くない」などの意見があるだろう。
もし僕が当事者ではなければ、フッと笑っていたかもしれない。
でも、僕はそういった全ての意見を聞きたい。様々な人の様々な価値観が知りたい。
その上で、誰かの役に立つことができれば、これほど嬉しいことはない。
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2018年8月追記:家族3人、元気でやってます!

2018年3月に娘が誕生!
この記事の中で紹介している、妊娠が判明した日からちょうど一年がたちました。
この一年はこれまでの人生の中で最も濃かったと思います。
学生結婚、出産、大学留年、就職と大きなイベントが同時期に起きて、いっぱいいっぱいになった時期もありましたがなんとかなっています。
そしてなにより、家族との時間は最高です。
検索してこの記事にたどり着いた人の多くは現在不安を抱えてることでしょう。
そんなあなたに僕は伝えたい。
どんなに不安なことがあって、なんならもうダメかもしてないって思ったとしても、しっかりと前を向いて一つ一つ乗り越えていけば必ず後になって振り返った時に笑顔でいられます。
僕がそうであったように、「大変だったけどいい経験だったな」って思える日が絶対にきます。
煩雑な文章ですが、ここまで読んでいただきありがとうございました。
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